アライグマをはじめとする鳥獣害対策について

【本ページに関する問い合わせ】
川越農林振興センター 
農業支援部 技術普及担当
TEL:049-242-1804

1 野生鳥獣による被害の概要

JAいるま野管内において、令和5年度における野生鳥獣による農作物被害額は、1,846万円、被害面積は0.5haでした。この中でもアライグマによる被害が被害地域全域で確認され、果樹や野菜、稲など幅広い作物で見られました。(写真1)

写真1 黒いアイマスクと縞の尾が特徴

アライグマの問題は、その生態や行動が日本の環境に適応してしまったことに起因します。ペットとして輸入された個体が逃げ出し、野生化した結果、在来種の生態系への悪影響が懸念されるとともに、農作物の被害が年々深刻化しています。
また、人間の居住空間である屋根裏や空き家に住み着くことで、建物被害や衛生問題も発生しています。

2 持続可能な農業を目指した地域ぐるみの対策

この問題に対処するためには、「持続的な農業が展開できる獣害に強い地域」を目指した取り組みが必要です。この目標を達成するためには、アライグマ対策を含む適切な鳥獣被害対策を地域全体で共有し、実践することが重要です。

① 農地に侵入させない

まず、被害対策の基本として、侵入防止柵の設置が挙げられます。侵入防止柵は、アライグマに「来ても食べられない」ことを学習させる非常に効果的な手段です。設置には、現場に応じて適切な形状や部材を選び、正しい設置技術を学ぶことが必要です。不適切な設置は、逆に動物を「本気」にさせ、さらなる被害を招く可能性があります。正しい設置を行うことで、効果的な防除が可能となり、被害の軽減が期待できます。(写真2)

写真2 アライグマによるスイカ被害

② エサを放置しない

次に、地域ぐるみの対策として、農作物の廃棄や放任果樹をなくす取り組みが求められます。廃棄された農作物や放任された果樹はアライグマにとって格好の餌となり、それらを解消することで被害の抑制に繋がります。また、地域全体で「使っていないものは撤去する」という意識を共有し、実際に廃棄物を処理することが大切です。特に冬場に残った果実は野生動物にとって重要な餌となるため、早急な撤去が必要です。

③ 居場所を作らない

さらに、集落内や隣接する山林の整備も重要です。草刈りをして見通しを良くすることで、アライグマが隠れたり集落内に侵入したりするのを防ぎます。このような地域環境の整備は、長期的な被害抑制に効果があります。

3 個体数管理と防除の実践

アライグマの個体数を管理するためには、捕獲活動が必要不可欠です。捕獲により個体数を減少させ、被害の根本的な抑制を図ります。また、電気柵を使用することで、野生動物に「危険」を学習させ、ほ場に近づかなくすることが有効です。電気柵の設置は初期費用がかかるものの、長期的な被害軽減に大きな効果を発揮します。
これらの対策を地域全体で共有し、協力して実行することが、持続可能な対策の鍵となります。一人一人が意識を持ち、隣人や地域コミュニティと連携することで、アライグマによる被害を最小限に抑えることが可能になります。持続可能な農業と生活環境の実現のために、地域全体で力を合わせて取り組みましょう。
なお、埼玉県では、獣害防止マニュアルを掲載しております。(下のボタンを押して移動)