「藤木しんや議員に問う
今後の農業の課題」
今年、2期目の当選を果たした藤木しんや参議院議員。現在、農業を取り巻く情勢はとても厳しく、特に急激な円安に伴う生産資材の価格高騰や異常気象など、多くの組合員は不安を抱えています。こうした中、JAとして組合員の皆さんがより良く農業に取り組めるように、現職の参議院議員である藤木議員をお招きし、今後の農業の課題について大木組合長と対談を行いました。
今回の特集では、対談の要点をわかりやすくまとめてご紹介します。
肥料の高騰について
大木組合長:急激な円安や不安定な海外情勢などの影響で肥料の価格が高騰しており、農家の苦労が大きい。どのような対策が考えられるか?
藤木議員:生産者の苦労は最もであり、私も懸念する事案の一つです。肥料高騰の背景には、日本の化学肥料の7~8割近くを中国やロシアなどといった海外の輸入に頼ってきてしまったことが挙げられます。
この問題は短期的に解決できる問題ではなく、中期的な視野を持って対策にあたりたいと考えています。具体的には、施設園芸などにおける燃油対策と同じように「セーフティーネット(※)」を構築し、生産者に加入してもらうことで肥料全体の価格の安定化を検討しています。今後も議論を進め、来年の秋以降の導入を図ってまいりますので、生産者の皆さまには、セーフティーネットによる効果がみられるまで、もうしばらくの間お待ちいただければと思います。
また、食料安全保障の一環として、価格決定のプロセスを明確化し、生産物の価格に影響が起きたとしても、農家の方々が安心して生産ができる環境の構築に努めていきたいと思います。
※予想される危険や損害の発生に備え、被害の最小化を目的に準備される制度や仕組みのこと。
物価の高騰について
大木組合長:世間では多くの食料品の物価が高騰している一方で、農作物の価格は例年並みのままである。この状況について、どのように考えているのか?
藤木議員:私個人の意見となってしまいますが、日本はデフレ時代に慣れてしまったため、それを基準とした価値観が根付いていることが一つの要因になっていると考えています。最低賃金を例に挙げると、900円台の価値基準で考える日本と1,500円台で考える諸外国、そうした所得感覚のギャップによるショックが国民に与える影響もあるかと思われます。
また、日本は生鮮食品など多くのものを輸入に頼っているという背景があります。その点を踏まえ冷静に価格動向をみると、輸入品を使用した食料品が高騰しているだけであり、国内で生産された青果物等の食品の価格は例年並みの水準を保っています。価格高騰については、マスコミによる報道だけでなく、自分自身で調べて情報をキャッチする力も必要であると思います。
後継者問題について
大木組合長:農家の後継者不足が深刻化している。どのような対策が考えられるか?
藤木議員:農家の後継者不足などは私も肌で感じている問題の一つです。この問題の根本にあるのは「農業者の所得確保が確立できていないこと」ではないかと私は考えています。一般的な家族経営の専業農家世帯を4人(本人夫婦および後継者夫婦など)として考えると、その世帯の手取り額は700万円程度と言われており、1人あたりで換算すると200万円を下回ってしまいます。私としては、「農業所得で1,000万円」がまずは目指すべき目標であり、これを達成することによって、農業で生活できるという認識が生まれ、後継者の増加に繋がっていくのではないかと思います。
そのためにも、国としては規制改革に舵を切るのではなく、規制緩和に向けて働きかけを行っていくことが必要であると思っています。規制緩和については、一概に全てを緩和するわけではなく、農家の方へのメリットは維持しつつ、規制する点と緩和する点を十分に考慮した仕組みづくりを考えております。既存の市場原理を変え、農政の規制緩和をすることは私が国会議員を目指したきっかけでもあります。私自身も農家の方が安定した所得を維持できるよう働きかけを行ってまいりますので、今後の動向に注視していただければと思います。
インボイス制度について
大木組合長:来年施行予定のインボイス制度など、農家はより厳しい状況に置かれることになる。この状況について意見を伺いたい。
藤木議員:私個人としては、この制度については異議を唱えております。農家や組合への負担を増やす施策であったり、そもそも理解をするのに苦労する制度ではなく、消費者目線に立ったシンプルな施策にすべきではないかと考えております。この制度については、農家の方々も非常に心配されていることも理解していますし、組合の方々も含め、多くご意見を賜っているので、課題として今後も検討を重ねていきたいと思っております。
米の今後の在り方について
大木組合長:米における新たな販路や所得向上への対応など抱えている課題が多くあるように思える。藤木議員が考える米の今後の在り方について意見を伺いたい。
藤木議員:まず販路についてですが、前提として日本で生産される短粒種(ジャポニカ米)は、世界からみるとマイナーな品種です。そうしたマイナーな品種を輸出していくには、「パックご飯」などに加工することでどの国の人でも食べやすい状態にすることが一つの手だと考えています。また昨今の新型コロナウイルスの影響もあり、パックご飯は巣ごもり需要のニーズにも合致しています。輸出だけでなく、国内でも需要があるパックご飯を開発するなど検討の余地があると考えています。
また、組合員の所得向上を掲げるならば、米については、一概に生産を主食用米にこだわる必要はないのではないかと思っています。具体例として、飼料用米の生産や小麦との二毛作など農家の所得向上につながる方法が多くあります。実際に私の地元である熊本では、若手農家に対して働きかけを行い、冬に小麦の裏作や大豆との二毛作を進めることで、遊休農地の解消や組合員の所得向上に結びついている事例があります。
いるま野管内の自然環境やカントリーエレベーターなどの施設の状況を考慮し、農家の方がより良く生産できる体制を農協と組合員が共に考えていくことが、今後の米の未来につながっていくのではないかと思っています。
藤木しんやのプロフィール
- 氏名:藤木しんや
- 誕生日:昭和42年2月25日
- 出身:熊本県上益城郡嘉島町
熊本県立熊本農業高校畜産学科卒業
- 経営内容
- 水田経営8ha(米・小麦・大豆)
- 畜産経営800頭(肥育牛150頭、繁殖牛650頭)
- 自己紹介
- 家族:両親、妻、子供:長女、次女、長男、次男
- 趣味:牛との語らい、農機具の修理、ドライブ
- 愛読書:地上(家の光協会)
- 特技:農機具の開発や修理、車の運転
- 座右の銘:(何事にも)一生懸命
- 経歴
- 昭和61年 就農(当時19歳)
- 平成17年 JA全青協会長 就任
- 平成26年 JAかみましき代表理事組合長 就任
- 平成28年 参議院議員通常選挙 初当選
- 令和元年 農林水産大臣政務官 就任(第4次安倍 第2次改造内閣)
- 令和2年 参議院自由民主党副幹事長 就任
自由民主党農林副部会長 就任 - 令和3年 自由民主党農林水産災害対策委員会事務局長 就任
- 令和4年 参議院議員通常当選 2期目
農林水産大臣政務官 就任(第2次岸田改造内閣)
藤木しんやの政策
~農業にかける想い~
農家だからこそ譲れない願いがあります。
誇り高き情熱と協同の力で、農業と地域の未来に挑戦します。
持続可能な食・地域・農業のために、今こそ「食料安全保障の強化」の実現を!
- 1 生産現場からの声を国政に届け、実現します
- 2 食料安全保障の強化の実現を目指します
- 3 中小・家族経営、中間地農業への更なる理解と支援の充実に取り組みます
- 4 地域の拠り所であるJAの取組を後押しします