3月9日、「JAいるま野狭山茶センター」が生まれ変わりました。同センターは、JA農産物直売所「あぐれっしゅげんき村」に隣接した狭山市堀兼に新設。今月号の特集では、新茶のシーズンを前に本格稼働を始めた「JAいるま野狭山茶センター」について紹介します。
完成までのあゆみ
「狭山茶」は、埼玉県南西部を中心に生産されるお茶の総称です。「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」と茶摘み唄でも歌われるように、静岡茶、宇治茶とともに日本三大茶として知られています。中でも「狭山茶」は、他産地に比べ寒冷地で栽培されているため、葉肉が厚くコクのある味わいを楽しむことができます。JA管内の生産量は、年間約600トン。200軒以上の茶工場が存在し、その多くが「自園・自製・自販」(※)という、独自の方式で経営しています。
こうした中、JAいるま野は2020年4月、茶専門農協のJA狭山茶業と合併。以来「富岡茶工場」(所沢市)と、「入曽茶工場」(狭山市)の二拠点体制で「狭山茶」の製造に取り組んできました。「富岡茶工場」では、主に生産者から買い取った荒茶をJAが独自に加工し製品化。(主な商品ラインナップ写真参照)年間約50トンを買い取り、JA農産物直売所などで販売してきました。また、「入曽茶工場」では委託加工事業を展開。利用軒数は100軒超、年間約37トン分を加工し、「自園・自製・自販」を支えてきました。しかし、施設の老朽化や作業の効率化、また、高齢化する生産者の作業負担軽減なども考慮した中で、新たな施設の計画を進め、今年3月の竣工に至りました。
※各茶園が自ら栽培し、自ら製造し、自ら販売すること。茶産地としては珍しい経営スタイル。消費者の声を茶園管理から製造工程で直接活かすことができるため、同じ「狭山茶」でも店舗ごとで違った味わいを楽しむことができる。
産地振興の一翼を担う新施設
「JAいるま野狭山茶センター」は、鉄骨造りの2階建て、延床面積は1147.11平方メートル。製茶、委託加工、焙じ加工の三つの仕上げ加工ラインを設けるなど品質、製造能力の向上を図っていきます。
委託加工は、10年以上の経験を持つベテランスタッフが生産者の求めに応じ、それぞれの独自性を出せるよう火入れ具合などを調整しながら製品として仕上げていきます。設備面においては、大きさや重さ、色によって茶葉を選別する機械などを旧施設から引き継ぐ他、遠赤外線による火入れ機を新たに導入するなど、従来の機械では対応が困難だった茶葉の加工も可能にしました。衛生面や品質面においても、エアシャワーの設置や異物検出など、危害分析重要管理点(HACCP)の考えを取り入れた衛生管理体制をより一層強化していきます。
今後、JAいるま野では、新たに誕生したこの施設を拠点に、特産品である「狭山茶」の持続可能な生産と県内外に向けた販路拡大を目指し、茶産地のJAとして「狭山茶」振興の一翼を担い、産地の皆さまとともに歩んでいきます。当記事では、「JAいるま野狭山茶センター」の内部を詳しく紹介しますので、委託加工(①仕分け②選別③火入れ④合組(ブレンド)⑤窒素充填加工(袋詰め))などに興味のある生産者の方はぜひ、ご相談ください。
満足を超える
品質へのこだわりを
狭山茶センターから
お届けします。
安全安心へのこだわり
JAいるま野では、消費者からの信頼を得られるよう原料や商品の管理を徹底し、生産者からの栽培管理記録(生産履歴)の提出によるトレーサビリティーに取り組んでおります。品質管理や衛生管理に力を入れ、常に安全安心を心掛けております。
品質管理および衛生管理の紹介
エアーシャワー
●異物を持ちこまない徹底管理
●異物混入防止用ユニホームを着用
冷蔵保管室(茶専用)
●お茶に適した温度を自動管理し、湿度が上がりにくい構造
成分分析機【GTN-9】および官能審査
●主要9成分を測定しAFスコアを算出(全窒素、アミノ酸など)
●熟練の職員による、官能審査の実施
全自動ガス充填包装機【HP-500】
●処理能力 平均300袋/h
●50g~300gの茶袋に対応
●投入時に目視による異物確認
微小異物金属検出機【NIP-ⅢD】&ウェイトチェッカー【CSJ22LM2444S】
●磁界型センサ-により金属を検出>
●テストピース:Fe(2.5mm)・SUS(2.5mm)を使用
●商品登録重量の範囲外を感知
Xray-HAWK【SX2030D】(X線異物検査機)
●X線の照射により異物を検出
●テストピース ガラス球(2.0mmφ~7.0mmφ)・SUS球(0.6mmφ~7.0mmφ)鉄や石等も検出
狭山茶製造のこだわり
JAいるま野では、管内の茶生産者より栽培管理記録(生産履歴)の提出を受けた荒茶原料のみを仕入れ、高性能の仕上げ機械を駆使し、熟練の加工技術で製造を行っております。
主な仕上げ加工特徴
静岡機械式総合機【NTO-R4】
●処理能力 63kg/h
●振動型の仕分篩により深蒸し茶から形状のある仕上加工が可能
●振動型篩と回し篩の兼用により荒茶を6種類の部位に仕分けし、後工程の作業効率化
CCDカメラ方式 茶用色彩選別機【GTS600V】
●処理能力 200kg/h
●CCDカメラによる判別で、煎茶と茎茶を高速で選別
●小さな形状の芽茶から茎茶の選別にも高い選別能力を発揮
マイクロ波遠赤外線乾燥火入機【6007型】
●処理能力 80~120kg/h
●マイクロ波による茶葉内部の水分を均一化し前処理乾燥を実施
●電気を熱源とするドラム内で茶葉に直接熱源を照射
●茶葉の長期的な火香の維持が可能
遠赤外線ハイブリット火入れ機【HOT-1LCR】
●処理能力 120kg/h
●茶葉の上下よりガスの遠赤化された熱源を照射
●上級茶火香付から業務用の火香付までスムーズな対応が可能
静岡式回転ドラム型火入機【RD-2000】
●処理能力 100~150kg/h
●従来の直火により、表面から茶葉に火香付け
●ガスを熱源とするドラムに茶葉が直接的に触れる火香が特徴
回転式ドラム三段返し焙機【M-900】
●処理能力 40kg/h
●多重構造のガスを熱源とするドラム内で、段階的に茶葉の水分を減らし、限界まで水分を抜いて焙煎
営農経済部 購買課 課長 宮﨑吉之
「狭山茶センター」稼働にあたって
特産品である「狭山茶」の新茶シーズンを前に、管内の茶生産者の皆さまおよび各関係機関のご指導ご協力により、新たな「狭山茶センター」を本格稼働することができました。
近年、時代の流れとともに、急須で茶を淹れる習慣が減少しておりますが、茶産地のJAとして消費者のライフスタイルに合わせた商品開発を進め、新たなニーズ開拓にも取り組む所存です。
今後も「狭山茶」の持続可能な生産と農業所得向上および県内外量販店への販路拡大を目指し、茶生産者の負託に応えられるよう職員一丸となり業務に取り組んでまいります。
狭山茶センター施設・業務概要
●業務内容 卸売販売・製茶加工・委託加工・パッケージング(包装)・茶冷蔵保管
●施設概要
□敷地面積:1,654.55平方メートル(500.5坪)
□建物:鉄骨造・2階建
□1階床面積:868.61平方メートル(262.7坪)
□2階床面積:278.50平方メートル(84.2坪)
□延べ床面積:1,147.11平方メートル(347.0坪)
●竣工 令和4年3月
「狭山茶」委託加工などに関するお問い合わせ
JAいるま野狭山茶センター
〒350-1312 狭山市大字堀兼2094-1
TEL:04-2959-3015
(受付時間/平日8:30 ~ 17:00)
生産者の声
お茶の平岡園(所沢市下富)
平岡 忠さん
合併前から「狭山茶」の加工を委託して、30年以上が経ちます。以前は、すべて自工場で加工し、大変な労力と時間を要していました。また、機械の老朽化やメンテナンスなどで、コスト面でもとても苦労しました。しかし、委託することで茶園の管理にも力を入れることができ、良質な茶葉の生産につながりました。機械も最新鋭のものを使用し、経験豊富なスタッフが仕上げてくれるので、安心して任せることができます。
近年、リーフ茶の消費が伸び悩んでいますが、この新施設を量販店やバイヤー等に積極的にアピールすることで、さらなる販路拡大と産地振興につながってくれたら嬉しいです。