JAいるま野 広報誌 2018.7 | No.267
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も起きています。これからは平坦地域だからと言って安心はしていられない状況です。 また、③については狩猟者の登録件数が県内でも減少しており、平成初期は7,000人程度でしたが、近年は約2,000人まで減少し、その過半は60歳以上の方々となっています。 平成19年には深刻化する鳥獣被害に新法(鳥獣被害防止特措法)が成立しました。この新法は地域が被害防止のための総合的な取り組みを行うことに対して国が支援していく内容です。市町が負担する駆除のための経費や調査・研究費用の一定割合が交付されます。このほかに「鳥獣被害対策実施隊」の地域設置を促進、「ジビエ」の推進を支援する内容も追加されています。鳥獣被害はヒューマンエラー 野生鳥獣が増加した原因は、人工林の増加や開発ではありません。山にエサが少ない訳でもありません。人里へ生息域を拡大させてきた原因は、動物にとってそこが「楽にエサが食べられる魅力的な場所」になったからです。被害地域は格好の餌場になっている。そしてその生息域は明らかに拡大傾向である。この事実を受け止める必要があります。 そして正しい情報を得て、皆さんが同じ方向を向いて行動しなければ状況は変わっていきません。現場でよく思うことは、「正しい情報が伝わっていない」ということです。「この辺りにいるわけがない」といった思い込みから被害にあって初めて慌てる方々も多い。これが対策の遅れに繋がります。 現在の鳥獣被害はヒューマンエラーの側面が大きい。思い込みや気づきの遅れ、捕獲中心の人任せの対応では被害は食い止められません。「地域ぐるみ」の取り組みが重要 鳥獣被害の防止を図るためには、地域の実情に応じ「被害管理」「生息環境管理」「個体数管理」の3つを適切に組み合わせた総合的な取り組みが必要です。重要なのは一人一人が正しい事実と技術を知って「自分の田畑は自分で守る」といった意識改革です。対策は1人の点から隣組数人の線、地域ぐるみの面へと広げていくことが理想的です。対策を円滑に行うためのメニューとして市町による「被害防止計画」の策定、「対策協議会」や「実施隊」の設置などがあります。これらを活用して地域全体で推進することが望ましいと考えられます。 「被害管理」では、侵入防止柵の設置等に取り組む場合は交付金が活用できます。防止柵は「来ても食えない」ための「最高の嫌がらせ対策」ですが、100の現場があれば100通りの柵があると言われ、県においても相手となる動物の習性を利用した数種類の防止策を開発しています。正しい研修を受けた指導者に相談してください。 「生息環境管理」では無防備な畑や果樹園、収穫残渣や廃棄作物などは、エサを与えて呼び寄せていることと同じです。集落に隣接する山を見通し良くしておくことや、ヤブや草むらをなくし動物の行動範囲を狭めることも重要です。 「個体数管理」では、狩猟者登録をしている方々が定められた期間や方法で行う「狩猟」や、行政の許可のもとに行う「許可捕獲」などが中心となります。 いずれにしても、これらを農家個々の意識改革のもとに地域全体で考えていく仕組みが必要です。埼玉県農業技術研究センター生産環境・安全管理研究担当 古谷 益朗 担当部長サル、ハクビシン、アライグマの被害対策を専門分野とし、研究対象動物の生態研究に基づく鳥獣害対策の現地指導に尽力する。イノシシやシカは河川敷等を利用し移動する。近年は違法廃棄防止のためにゲートで閉ざされ、人や車の圧力も弱く荒れた河川敷が多い。03「いるま野」2018.7

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